
日本の給料が上がらないのはなぜ?データで見る現状と、これから起こるかもしれない変化

1. どうして日本の給料は上がらないの?
「もう何年も昇給していない…」
「働いても働いても生活が楽にならない…」
こんな声、あなたのまわりにもありませんか?
実は、日本の給料はここ30年近くほとんど上がっていないんです。海外の先進国では賃金が伸びているのに、日本だけが取り残されているような状況です。
でも最近、少しだけ変化の兆しも見え始めています。
この記事では、「なぜ日本では給料が上がらないのか?」をわかりやすく解説しながら、今後どうなるのかについても考えていきます。
2. データで見る、日本の“賃金停滞”
◯ 1990年代から止まったままの給料
- 日本では1997年ごろをピークに、実質賃金(物価を考慮した給料の価値)が下がり続けています。
- 給料そのもの(名目賃金)は多少上がっていても、物価の上昇に追いつかないので、実際には生活が苦しくなっている人も多いんです。
◯ 近年の動きは?
- 2025年3月時点では、給料は前年比で2.1%アップ。
- でも、物価のほうがもっと上がっているため、実質的にはマイナス状態が続いています。
- 大企業ではベースアップ(基本給の底上げ)が進んでいますが、中小企業ではまだまだ厳しいのが現実です。
3. 給料が上がらない6つの理由
① 生産性が上がっても、給料に反映されない
たとえば、効率よく働けるようになったり、新しい技術が入ってきたりしても、それが給料に反映されにくいのが今の日本の構造です。
② 非正規雇用や高齢者の増加
パートやアルバイトなど、低賃金の働き方をしている人の割合が増えているため、全体の平均給料も下がってしまいます。
③ 中小企業に余裕がない
企業の7割を占める中小企業では、原材料や電気代の高騰などもあり、人件費を上げる余裕がないという声が多く聞かれます。
④ 値上げに対する“恐怖感”
長く続いたデフレの影響で、**企業も消費者も「値上げ=悪」**という空気に慣れてしまっています。
だから、会社もなかなか価格を上げられず、その分、給料も上げられないのです。
⑤ 自動化・AIで仕事が減る?
テクノロジーが進むことで、これまで人がやっていた単純作業の価値が下がっています。そうなると、人に払われるお金も減りやすくなってしまうのです。
⑥ 人手不足でも給料は上がらない?
介護や保育など、「人が足りない」と言われる業界でも、国が決めた報酬制度の中で動いているため、給料が上がりにくいという問題があります。
4. それでも変化の兆しはある
◯ 物価上昇がきっかけに
円安や原材料の値上がりによって、物価が上がり始めました。
これまでずっと低価格を維持してきた企業も、ようやく「値上げ」に踏み切るようになってきています。
◯ 大企業が先に動き出した
2025年の春闘(労使交渉)では、大手企業の平均ベースアップが5%超えという例も。
その影響が、中小企業や非正規雇用にも少しずつ波及する可能性が出てきました。
◯ 最低賃金を大きく引き上げる動きも
政府も、「最低賃金を一気に引き上げて底上げしよう」という方向に動いています。
地方でも「人材を確保するために給料を上げよう」という会社が増えています。
5. 実際に起きている“変化”の事例
◯ 埼玉県の金属加工会社「伊藤鉄工」
この会社では、原材料の値上がりをきちんと価格に転嫁することで、2年間で平均11%の給料アップを実現しました。
ただし、社長は「今後も上げ続けられるかは慎重に見ている」と話しています。
◯ 地方自治体と企業の連携
一部の自治体では、最低賃金の引き上げを企業と一緒に進め、地域全体で給料を底上げしようとする取り組みも始まっています。
6. 日本の給料、これからどうなる?
● 明るい未来のシナリオ
- インフレや価格転嫁が定着し、企業に余裕が出てくれば、給料も上がりやすくなります。
- 大企業から中小企業へ、そして非正規雇用へと波及していけば、格差も縮まっていくでしょう。
● 逆に暗い未来も…
- 中小企業がこれ以上のコスト増に耐えられなければ、ベースアップも止まってしまう可能性があります。
- インフレが落ち着いたことで、「やっぱり給料は上げられない」という空気に戻るかもしれません。
7. まとめ:給料を上げるには“構造”を変えなきゃいけない
日本の賃金が上がらなかったのは、企業の体力不足や働き方の多様化、そして社会全体の“空気”といった、いくつもの理由が重なっていたからです。
これから給料を上げていくには…
- 中小企業の生産性アップを支援する
- 働く人に見合った賃金が払える価格設定を企業ができるようにする
- 女性や非正規の待遇を見直す
- 転職しやすく、より良い環境にチャレンジできる社会にする
…といった取り組みが大切になってきます。
「この国では、がんばっても給料は上がらない」――
そんな空気を変えていくには、私たち一人ひとりの声と行動がカギになるかもしれません。