
「出世に興味がない」営業職が増えている背景とそのメリット・デメリット

「うちの若手営業、成績はいいのに昇進の話になると興味を示さない」
「マネージャーに昇格させようとすると、“今のままでいいです”って言われてしまう」
最近、こんな声を耳にすることが増えてきました。
特に営業職の現場では、「出世しない働き方」を選ぶ人が目立つようになってきています。
なぜ今、営業職で「出世したくない」と考える人が増えているのか?
この記事では、その背景や理由、出世しないことのメリット・デメリット、そして実際の事例を交えてご紹介します。
なぜ「出世しない営業職」が増えているのか?
1. マネジメントに魅力を感じない
営業職として成果を出してきた人ほど、「現場でお客様と向き合っていたい」という思いを強く持っています。
マネージャーになると、社内調整や部下の育成、会議や報告業務などが中心に。
お客様と直接関わる時間が減ってしまうのが、物足りなく感じる理由です。
昔は「部長になってナンボ」といった価値観もありましたが、今はそういう時代でもなくなってきています。
2. 昇進しても、給料がそこまで増えない
「課長になったけど、手取りは数万円アップだけ」
「残業代が出なくなった分、むしろ収入が減った」
こんな話もよく聞きます。
責任ばかりが増えて、報酬があまり変わらないとなると、「今のままでいいかな」と考えるのも自然なことですよね。
3. ワークライフバランスを大切にしたい
最近は、仕事だけでなく、家庭や趣味、健康なども大切にしたいという価値観が広がっています。
マネージャーになると、部下のフォローで休日も気が休まらなかったり、帰りが遅くなったりすることも少なくありません。
「プライベートを犠牲にしてまで、昇進したくない」
そう考える人が増えているのです。
【事例①】営業スペシャリストとして活躍する30代男性
大手メーカーに勤める中村さん(仮名・34歳)は、10年以上営業の第一線で活躍してきました。
会社からは課長昇進の打診もありましたが、彼はこう言います。
「自分は、お客様と直接話して、課題を解決していくのが好きなんです。
社内での調整や部下育成がメインになると、やりがいを感じにくくなる気がして」
その思いを汲んだ会社は、「営業スペシャリスト」という非管理職ながら高待遇なポジションを新設。
彼は現在も、現場の第一線で活躍し続けています。
出世しない働き方のメリットとは?
■ 個人にとってのメリット
- 自分の得意分野に集中できる
やりたいことに時間を使える分、成果も出しやすくなります。 - ストレスが少ない
人間関係のトラブルや部下対応のストレスが軽減されます。 - プライベートとの両立がしやすい
自分の時間を確保しやすく、家族や趣味も大切にできます。
■ 会社にとってのメリット
- プロフェッショナル人材が長く活躍できる
マネジメントに向かないけど成果を出せる人材が定着します。 - 多様なキャリアパスを用意できる
管理職だけが正解じゃないと示せることで、社員の満足度や定着率も上がります。 - 柔軟な組織づくりが可能に
一人ひとりの価値観を尊重する会社は、採用面でも有利になります。
とはいえ、デメリットもある
■ 個人側のデメリット
- 昇給の上限が低くなる可能性
管理職にならないと届かない給与水準がある会社も。 - 意思決定に関われないことがある
非管理職だと、会社の方針に直接意見しづらい場面もあります。 - 将来の立ち位置が不安定になることも
年齢を重ねたときに、今のままの働き方が続けられるか不安になる可能性もあります。
■ 企業側のデメリット
- 管理職が足りなくなる
中堅社員が昇進を望まないと、組織を回す人材が不足します。 - 評価制度が複雑になる
プレイヤーとマネージャー、それぞれに見合った評価制度が必要になります。 - 人材の育成・引き継ぎが進まなくなる
優秀な営業が現場に残る一方で、部下育成が手薄になる懸念も。
【事例②】副業を優先し、昇進を断った40代男性
IT系企業の法人営業として活躍する吉田さん(仮名・41歳)は、長年の経験を持つ中堅社員。
40代になり、課長への昇進を打診されましたが、彼はこう答えました。
「副業でスタートアップ支援をしていて、そちらの活動にも時間を割きたいんです。
管理職になると時間のコントロールが難しくなるので…」
会社は彼の希望を受け入れ、社内講師やナレッジ共有といった「マネジメント外」での活躍の場を用意。
彼は今、副業と本業のバランスを取りながら、自分らしく働いています。
出世しない選択をした人が考えるべきこと
「昇進しない=逃げ」ではありません。
むしろ、自分らしい働き方を見つけるための“積極的な選択”です。
とはいえ、長期的に働き続けるためには、いくつか意識したいポイントがあります。
1. スペシャリストとしての価値を高める
- 特定業界・分野に強みを持つ
- 顧客から「この人に任せたい」と思われるような専門性を身につける
2. 評価制度やキャリアパスを理解する
- 「出世しない人材」にも明確な評価軸があるか?
- 上司や人事と話しながら、納得できる道を見つける
3. 副業や自己投資で視野を広げる
- 営業以外のスキルも育てておく
- 将来的な選択肢(独立や転職)を増やしておく
まとめ:「出世がすべて」じゃない時代に
営業職にとって、「出世しない」という選択肢は決して甘えではありません。
それは、自分の価値観に正直に、納得できるキャリアを築くための選択です。
マネージャーになって力を発揮する人もいれば、プレイヤーとしてずっと現場で輝く人もいます。
どちらが正解というわけではありません。
企業もまた、「出世しない=やる気がない」と決めつけず、さまざまな働き方を認める柔軟さが求められています。
あなたは、どんな働き方が“自分らしい”と思えますか?
そして、そのために何を選び、どう動きますか?