
「人のために働いているのに…」介護・保育・福祉の現場でよく聞く“給料が報われない”問題

「大変なのはわかってたけど、こんなに給料が低いとは思わなかった…」
ある保育士の女性がそうポツリと話してくれました。彼女の月収は手取り18万円。朝7時から夜7時まで働いて、子どもたちと笑顔で過ごし、保護者の対応にも追われる毎日。でも、働き続けるには給料が足りないと感じているのです。
介護・保育・福祉の仕事は、人の命や暮らしに関わるとても大切な仕事です。それなのに、「給料が安い」「ちゃんと評価されない」「辞める人が多い」といった悩みが尽きません。この記事では、現場の声や実際の事例をもとに、この給料の問題について掘り下げてみます。
■使命感だけじゃ続けられない
◆ 事例①:介護歴10年、月収21万円の現実
佐藤さん(仮名・40代女性)は、地方の特別養護老人ホームで介護士として働いています。10年以上のベテランで、利用者さんやご家族からも信頼されています。でも、手取りは約21万円。夜勤や休日出勤もあるのにこの金額です。
「身体はつらいし、精神的にも大変なときがあるけど、利用者さんの『ありがとう』が励みで続けてきた。でも最近は、このままでいいのかな…と思うこともある」と話してくれました。
彼女のような経験豊富な人でも給料があまり上がらず、不安を感じている人が多いんです。だから「他の仕事に変えようか」と考える人も増えています。
■なぜ給料が上がらないの?
介護・保育・福祉の仕事が給料が低いと言われる理由には、いくつかの社会的な背景があります。
◆ 1. 公的制度に頼った収益構造
多くの福祉施設や保育園は国や自治体からの補助金や制度によって成り立っています。たとえば介護報酬や保育士の配置基準などです。だから施設側は自由に利益を増やしにくく、給料に回せるお金も限られてしまいます。
◆ 2. 社会の評価が低い
「子どもと遊んでいるだけ」「座って話を聞いているだけ」といった誤解もあって、仕事の大変さや重要さが社会で十分に理解されていません。その結果、給料も低くなってしまうんです。
◆ 3. 長時間労働と重い責任
この仕事は単に長時間働くだけでなく、利用者さんの命や安全に関わる責任も重いです。けれども、そうした負担が給料に反映されていないのが現実です。
■「続けられない」から人手不足が深刻に
厚生労働省のデータによると、介護の離職率は15%以上、保育も10%近くと高い数字が続いています。これが人手不足をさらに悪化させています。
人が足りないだけでなく、経験者が育たないために仕事の質も落ちてしまう悪循環です。
◆ 事例②:新人が1年で辞めてしまう保育園
ある中規模の私立保育園では、新人保育士が毎年のように1年以内に辞めてしまいます。理由は「給料が安くて生活できない」「残業代が出ない」「人間関係がつらい」など。残ったベテランに負担が集中し、さらに辞める人が増える…という悪い流れが続いています。
■「やりがい搾取」から抜け出すには
この問題をどう解決していけばいいのでしょうか?
◆ 1. 給料の見直しと適正化
政府は最近、介護・保育の処遇改善に力を入れていて、補助金やキャリアアップ支援をしています。実際に給料が少し上がった施設もありますが、まだまだ足りません。
経験年数に応じた昇給や、管理職や専門職のキャリアパスを作ることが大切です。そうすれば、長く働き続けやすくなります。
◆ 2. 働きやすい職場作り
長時間労働や休日出勤を減らし、チームで助け合う仕組みやICTの導入で仕事を効率化することも必要です。心のケアのためにメンタルサポートや相談窓口を作ることも効果的です。
◆ 3. 社会の理解と評価を深める
介護・保育・福祉の大切さをメディアや教育で広く伝え、「命を支える仕事なんだ」という理解を深めることが、給料アップや待遇改善にもつながります。
■個人でできることもある
社会全体の改善が必要ですが、働く人自身もできることがあります。
◆ 自分のスキルや経験を整理しよう
介護や保育の資格や経験は、他の仕事でも評価されます。自分の強みを整理しておくことで、転職やキャリアアップの選択肢が広がります。
◆ 資格取得や副業で収入アップ
介護福祉士や保育士の中には、副業で訪問介護をしたり、情報発信やコラム執筆で収入を増やしている人もいます。収入の柱を複数持つのも一つの方法です。
■人のために働く人がもっと大切にされる社会に
介護・保育・福祉の仕事は、とても尊い仕事です。でも今のままでは、続けるのが大変な状況です。社会全体で問題に取り組み、働く人自身も声を上げて、自分の価値を見つめ直していくことが必要です。
「人のために働く人が、もっと大切にされる社会に」
そんな当たり前のことが、当たり前になる日が来ることを願っています。