深刻化する人手不足問題とその対応策:事例を交えて考える

2025.5.02
コラム

1. はじめに

近年、日本では多くの業界で人手不足が深刻になっています。少子高齢化によって働き手が減少し、特に中小企業や労働集約型の業界では人材確保が難しくなっています。さらに、コロナ禍を経て働き方の価値観が変わったことで、従来の採用方法では人が集まりにくい状況も生まれています。

この記事では、人手不足が特に深刻な業界を取り上げ、それぞれの現状や課題、具体的な対応策について事例を交えながらわかりやすく解説します。


2. 人手不足が深刻な業界とその課題

(1) 介護業界

現状

介護業界では、高齢化の進行とともに介護サービスの需要が拡大しています。しかし、それに対して働き手が足りず、厚生労働省の予測では2025年には約32万人の介護職員が不足するとされています。

課題

  • 給与の低さ:他業界と比べて給与が低く、長く働くことが難しい。
  • 労働負担の大きさ:体力的にも精神的にもハードな仕事が多い。
  • 資格取得のハードル:無資格で働ける業務もあるが、キャリアアップには資格が必要。

対応策

  • 給与や待遇の改善:国の補助金を活用し、介護報酬を引き上げる取り組みが進んでいる。
  • 外国人労働者の採用:EPA(経済連携協定)を通じて、海外からの介護人材の受け入れを強化。
  • 介護ロボットやICTの活用:センサーやロボットを導入し、業務負担を軽減。

事例:SOMPOケアの取り組み

SOMPOケアでは、介護ロボットやICT技術を活用して、介護スタッフの負担を減らす工夫をしています。また、外国人スタッフの受け入れにも積極的で、文化の違いを乗り越えるための研修制度も充実させています。


(2) 建設業界

現状

建設業界も人手不足が深刻です。特に若い世代の就職が少なく、現場では50代以上のベテランに頼る状況が続いています。国土交通省によると、建設業の労働者の約35%が55歳以上であり、10年後には大量の引退者が出ると予想されています。

課題

  • 若手の採用が難しい:3K(きつい・汚い・危険)のイメージが強く、敬遠されがち。
  • 技術継承の問題:熟練の技術者が引退すると、ノウハウが失われるリスクがある。
  • デジタル化の遅れ:ICT技術の活用が進んでおらず、効率化が難しい。

対応策

  • 賃金や労働環境の改善:若手が安心して働けるよう、給与アップや福利厚生の充実を進める。
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入:建築現場でのBIM(建築情報モデリング)やドローンを活用し、業務の効率化を図る。
  • 外国人労働者や女性の活躍促進:「建設女子」プロジェクトなどを通じて、多様な人材の受け入れを進める。

事例:大林組の取り組み

大林組では、AIを活用した建設現場の管理システムを導入し、作業効率を向上。また、外国人技能実習生の受け入れを積極的に行い、技能教育の支援にも力を入れています。


(3) IT業界

現状

IT業界ではデジタル化の加速によりエンジニアの需要が急増していますが、人材不足が続いています。経済産業省の試算では、2030年には最大79万人のIT人材が不足すると予測されています。

課題

  • 即戦力となる人材が不足:専門スキルを持つエンジニアの育成が追いついていない。
  • 長時間労働の問題:納期に追われ、過労が発生しやすい。
  • 未経験者の育成が不十分:教育制度が整っておらず、未経験者の参入が難しい。

対応策

  • リスキリング(スキルの再習得)の推進:政府や企業がプログラミング教育やデジタルスキル研修を強化。
  • 柔軟な働き方の導入:リモートワークやフレックスタイム制を取り入れ、働きやすい環境を整備。
  • 外国人エンジニアの採用:グローバルな採用活動を強化し、多国籍なIT人材を確保。

事例:サイバーエージェントの取り組み

サイバーエージェントは、社内教育プログラム「AIラボ」を設置し、社員のスキルアップを支援。また、海外のIT人材採用にも力を入れ、グローバル化を進めています。


3. これからの人手不足解消に向けた展望

人手不足の解決には、以下の3つのアプローチが鍵になります。

  1. テクノロジーの活用
    • AIやロボット、デジタル技術を導入し、業務効率を上げる。
  2. 多様な人材の活用
    • 外国人、高齢者、女性など、幅広い人材の活躍を支援する。
  3. 働き方の改革
    • フレックスタイム制やリモートワークを導入し、柔軟な働き方を実現する。

これらの対策を進めることで、企業は持続可能な労働環境を作り、労働力不足の問題を解決に近づけることができるでしょう。


4. まとめ

人手不足は、多くの業界で避けられない課題ですが、テクノロジーの導入、多様な人材の受け入れ、働き方の見直しなどで解決の道は開かれます。企業と社会全体が協力しながら、新しい時代に対応した労働環境を整えていくことが重要です。

人手不足を「危機」ではなく「変革のチャンス」と捉え、前向きに取り組んでいきましょう!

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