人材不足と障害者採用のあり方を考える

2025.4.29
コラム

日本では現在、深刻な人材不足が問題となっています。少子高齢化による労働人口の減少や、特定の分野での人手不足が企業経営や社会全体に大きな影響を及ぼしています。一方で、障害者の就労率はまだ低く、多くの人が働きたいという気持ちを持ちながらも、活躍の場を見つけられない状況があります。
この記事では、人材不足の現状を整理しながら、障害者採用の可能性とその進め方について事例を交えて考えてみます。


1. 日本の人材不足の現状

少子高齢化で進む労働力不足

日本では、少子高齢化が急速に進んでいます。2025年には、65歳以上の高齢者が全人口の約30%を占めるといわれています。働き手である15~64歳の生産年齢人口はどんどん減っており、企業は労働力の確保に苦労している状況です。

特定分野での人手不足

特に介護、建設、ITなどの分野では人手不足が目立っています。例えば、介護業界では2025年までに約33万人の人材が不足すると予測されています。IT業界でも同じように、優秀な技術者が足りない状況が続いています。


2. 障害者雇用の現状と課題

障害者雇用を義務付ける法律

日本には「障害者雇用促進法」という法律があり、一定の規模以上の企業には障害者を雇用する義務があります。現在、企業には従業員の2.3%以上を障害者として雇用することが求められています。しかし、この基準をクリアできていない企業も多く、障害者雇用が形式的に終わってしまうケースも少なくありません。

乗り越えるべき課題

障害者雇用にはいくつかの課題があります。たとえば、障害の種類や程度に応じた職場環境の整備が必要です。車椅子を使う人にはバリアフリーのオフィスが必要ですし、視覚障害者には音声ガイドなどの技術が求められます。
また、「障害者は働くのが難しいのでは?」という誤解や偏見がまだ残っていることも、大きな壁になっています。


3. 障害者雇用がもたらす可能性

障害者が企業にもたらす力

障害者の中には、高いスキルや専門知識を持つ人が多くいます。しかし、職場環境や働き方の制約が原因で、その力を発揮できない人も少なくありません。リモートワークや柔軟な勤務形態を取り入れることで、こうした才能を活かすことができます。

職場の多様性を高める

障害者が職場に加わると、自然と多様な価値観や新しい視点が生まれます。たとえば、視覚障害者がシステム開発の中で「アクセシビリティ」の観点を提供し、製品をより多くの人が使いやすいものにする、といった例があります。このように、多様な人がいることで企業の競争力が高まります。


4. 障害者雇用の成功事例

IT企業A社の場合

あるIT企業では、視覚障害者のプログラマーを積極的に採用しています。音声ソフトや画面読み上げ機能を活用し、彼らがスムーズに仕事をこなせるよう工夫しています。この取り組みによって、視覚障害者の「使いやすさ」に関する新たな視点が活かされ、同社のシステムの品質向上につながりました。

小売業B社の場合

大手小売業では、聴覚障害者を多く採用し、手話や筆談を活用したコミュニケーションを導入しました。この結果、障害者が持つきめ細やかな接客が評価され、顧客満足度が大きく向上しました。この会社はさらに採用の幅を広げ、より多様な人々が働ける職場づくりを進めています。


5. 障害者採用を進めるために

1. 職場環境を整える

まずは、障害者が働きやすい環境を整えることが重要です。バリアフリー化や、業務をサポートするための技術導入を進めましょう。これらには、国や自治体からの補助金を利用することもできます。

2. 社内の理解を深める

障害者雇用について社内研修を実施し、従業員全体の理解を深めることも大切です。障害者ができること、活躍できる分野について正しく知ることで、職場の受け入れ態勢が整います。

3. 働き方を柔軟にする

テレワークやフレックスタイム制を導入することで、障害者が無理なく働ける環境がつくれます。身体的な負担を減らしながら、効率的に仕事を進められる仕組みを考えましょう。


6. おわりに

人材不足の解消と障害者の雇用促進は、企業にとっても社会にとっても大きなメリットがあります。障害者を「支援が必要な存在」としてではなく、「職場に新しい視点や可能性をもたらす存在」として考えることが重要です。
この記事が、多くの企業や個人が障害者雇用を進めるきっかけとなり、誰もが活躍できる社会づくりにつながることを願っています。


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